塵芥拾

ぽっと思いついたことを書いています。

シャザム!

久々にとても面白くない映画を観ました。しかしただ面白くないと言うのもあれなので、なぜ面白くないのかつらつら書いていきたいと思います。

 

『シャザム!』(2019年)

監督:デヴィッド・F・サンドバーグ

主演:ザッカリー・リーヴァイ

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 あらすじは、詳細なものがWikipediaにあるのでそちらを参照してください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B6%E3%83%A0!_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

 

1.コメディシーンが面白くない

 マーベル系の映画はポップなコメディ調であるのに対し、DCエクステンデッド・ユニバースは、ダークでシリアスな作風が特徴と言えました。しかしMCUの大成功に対しDCシリーズはイマイチでした。そんなDCが盛り返すためコメディ調に路線変更した作品の一つが『シャザム!』と言われています。(本当かどうかはわかりません笑)

そんな作品ですが、コメディシーンは「キックアス」シリーズの焼き直しのようなもので、ヒーロー弄り系や主人公の空回り的なものに終始していました。「アイアンマン」などの掛け合い的な面白さはなかったように感じました。コメディに深みが足りないの一言に尽きます。

 

2.主人公の戦う動機が分からない

 主人公は本当の母親を探すためしばしば里親の家を逃亡する問題児でした。劇中の里親に対して偽の家族であると吐き捨て、食事前の円陣にも参加していませんでした。しかし生んでくれた母に会った際に自分が捨てられたこと、必要とされていないことを知ります。その後囚われた兄妹を救うため戦いに身を投じていきます。

 主人公の変わり身のはやさに驚きを隠せません。あれだけ偽物と言っていたのに生んでくれた母親に捨てられた瞬間に里親のために.....。家を飛び出したときに意味深に里親が後を追いかけていました。あれはただ家を子供たちだけにするための処置なのでしょうか。生みの母親に捨てられた後に優しい言葉を里親がかけてあげることで「本当の」家族になるという一場面を入れるだけでも、戦う動機が分かりやすくなるはずです。

 

以上の二点が主なものと言えます。主に話に関する指摘でしたね。映像としては特に斬新なカットや印象に残るカットもなく、やはりこちらも面白くありませんでした。

 

 

とひたすら悪いところを述べたのですが、以下に申し訳程度にいいところを挙げていきます。

1.新しい家族像

 上で家族への思い入れの描写が甘いと指摘しましたが、その家族構成はまさに人種のサラダボウル、アジア系黒人白人ヒスパニック様々です。また「家族」だけど血がつながっていないです。従来のアメコミと言えばゴリゴリに白人男性だらけでしたが、近年その風潮が崩れつつありました。(「ブラックパンサー」「キャプテンマーベル」など)そんな風潮の中で、新しい家族像を提示したこの作品は一つ進化した作品といえます。ヒーローの力を兄妹に与えるところがとても示唆的です。奇しくも同じ2019年公開の「スターウォーズⅨ スカイウォーカーの夜明け」でも、最後に血のつながりのないレイがスカイウォーカーを名乗る=血の繋がりのない新しい家族の誕生で話が終わります。(とてもざっくりとした要約ですのであしからず)ヴィラン、ヒーローともに生みの親から拒絶されるなか、全てを破壊しようとするヴィランと新しい家族を見つけ共に世界を救うことを選択するヒーローという構図は、「輪るピングドラム」に似た構図でもありました。そろそろ血の繋がりの有無、宗教や国、性別の違いを乗り越えた新しい家族(共同体)が実現するといいですね。

 

2.大いなる力には大いなる責任が伴うを強調しない

 スーパーマンバットマン、アイアンマン、スパイダーマンなど基本的にヒーローは己がもつ力の危うさを自覚することでスーパーヒーローへと成長していきます。一方本作品は新しい繋がり=家族を得ることでスーパーヒーローへと変貌します。この部分が新しかったと感じています。またこれにより安易に男女の愛に逃げることを防げていました。

 

 以上二点が新しい要素で評価に値すると考えています。しかし新しい家族を獲得する行程の描写が甘すぎるがゆえに、面白くない作品となってしまったのではないでしょうか。アメコミ映画はひと昔前は映画の中では二流的な扱いでしたが、昨今メインストリームになりつつあります。「ジョーカー」がヴェネツィアで賞を取るなどより地位が上がっています。(ジョーカーについては思うところがありますが....)アメコミをなんとなく敬遠している方もこれを機会になにか観てもいいかもしれませんね。(シャザム!はお勧めしません)