塵芥拾

ぽっと思いついたことを書いています。

「彼らが本気で編むときは、」と呪いのお話

『彼らが本気で編むときは、』(2017年)

監督:荻上直子

主演:生田斗真

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 『his』に引き続きLGBTQものですね。ですが今回は(今回もかもしれませんが)LGBTQにはそれほど関係のないお話です。端的に言ってしまうと親の呪いです。

 トモは味覚がおっさんだとしばしば揶揄されます。切り干し大根、しじみの醬油漬け、イカの塩辛等々を好んでいるようだからです。このことについて特に劇中で掘り下げられることはありません。しかしなぜトモはこれらの食べ物が好きなのかと考えたとき、それは食べたことがあるからでしょう。そして母親が夜遅くに酒を呑んで帰ってくる描写が冒頭にあることからも、それらの食べ物は母親も好きな食べ物で、トモは母親と一緒に食べたのでしょう。つまり一人で食べていたコンビニのおにぎりは嫌いだけど、一緒に食べれたこれらの食べ物は好きという可能性を考えられます。

 そう考えたとき、やはり最後にトモは母親のもとに帰っていくことに説明がつきます。ネグレクトを受けていたとしても、どこかに親の影響が残っている,,,,,,これを私は呪いと呼んでいるのです。勿論その影響が良いときもあると思います。しかし当然と思っていたことが親の影響からくるもので世間的には”悪いこと”だったときや親を憎悪しているのにふとした時自分の中に親の影響を感じたときなどは最悪でしょう。

 私は血がつながっているから、親だからという理由で人生に介入されることが苦痛で仕方なかったです。でもそれを伝えたところでたいてい親はこう言います。「あなたを生んで育てたのは誰だと思ってるの」と。そもそも子供を育てるのは親の義務ですし、私は生んでくださいと頼んでもないのに私を勝手に生んで恩人面するのもおかしな話です。このように親を疎ましく思っているのですが、ふとした時親の影響を感じる場面があり、しばしばこの逃れられない影響を呪いだと嘆いています。

 今回は、そんな私が先述のトモの食べ物の好みを聞いたとき、どこかやりきれない悲しみを覚えたという話でした。