塵芥拾

ぽっと思いついたことを書いています。

新聞記者 その2

前回の続きで「新聞記者」についてです。

 

この映画、加計学園問題をモデルとした事件を軸とした話と言えます。また伊藤詩織さんの事件をモデルとしたものもありました。というのもこの映画の原作者が、これらの事件を追っていた(る)ジャーナリストのようですね。首相は、顔はおろか名前すら登場せず(登場してたらすみません)、実際の事件でしばしば言及された「総理のご意向」の捉えどころのなさがでていましたね。

内閣府(内調)=暴走する権力

新聞記者=暴走と戦う集団

Twitter(一般市民)=与えられる情報に影響を受けやすいもの

といった構造のなかで、主人公二人の戦いが描かれていたように思います。

日本の新聞記者は権力と戦えているのか、どう戦うのかがこの映画の主眼なのでしょうか。予告でも「この国に新聞記者は必要なのか」とあったり、映画内の番組で日本のジャーナリズムについて言及していました。ですが総じて我々一般市民が政治とどう向き合うか、どう情報を扱っていくかといった話に思えました。

 

そんな映画ですが、「報道しない自由」を描いていなかったように感じられ残念でした。原作を読んでいないので何とも言えないのですが、これを描くと映画の構図がぶれるからでしょうか。ですが仮にも「新聞記者」という題で情報について描いている作品が、これを描かないのは厚みに欠けるというか誠実さに欠けます。メディアにも問題があり、それも含めて新聞記者はどうするべきか、我々一般市民はどうするか考えられる映画にしてほしかったですね。

 

 

批判めいたことを書きましたが、映像の演出や役者の演技には見るべき点が多く良い作品だと思いました。

 

 

 

新聞記者 その1

『新聞記者』(2019年)

監督:藤井道人

主演:シム・ウンギョン、松阪桃李

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昨年評判をしばしば耳にしていたので観ようと思っていたのですが、うだうだしていて観る機会を逸していました。しかし日本アカデミー賞にノミネートされたということで、先日観に行ってきました。

 

藤井直人監督の作品はこれが初めての作品でした。シム・ウンギョンは、「サニー 永遠の仲間たち」(2011年)「王になった男」(2012年)「怪しい彼女」(2014年)「ブルーアワーにぶっ飛ばす」(2019年)で拝見したことがありました。コミカルな役をするイメージが強かったので、今回割とシリアス目な演技をしていて驚きました。松坂桃李の作品は多数観ているので割愛しますが、ここ二三年でぐっと力をつけた印象が強いです。

 

映画は、少し違和感はありましたが本格派の政治モノで緊張感あふれる作品でなかなか楽しく観れました。内調の建物内を常に薄暗くすることで、内調の暗躍ぶり、主人公の息苦しさや疑念などが上手く表現されていました。また割とカメラがかすかに揺れ続けていて巨大な権力へ挑む人々の心の不安や意気込み、憤りが伝わってくるようでした。

 

とそれっぽい浅いことをつらつら書きましたが、一番感銘を受けたのは田中哲司でした。めちゃくちゃ怖かったです。序盤の「お前子供できるんだってな」は怖すぎて鳥肌がたちました。映画らしく抑えられた演技で内調のダークな部分を一人で体現なさっていました。

 

 

今回は映画の表層の話でしたが、別記事でほんの少し映画が扱っていた内容にも触れると思います。今回はここまでです。